「歯列矯正って痛いイメージがあるけど、実際のところどうなの?」 そんな疑問をお持ちのあなたへ。歯科医師が、歯列矯正中の痛みについて詳しく解説します。
歯が動く際の痛み、装置による刺激など、矯正中の痛みは人によって感じ方が異なります。 この記事では、矯正中の痛みについて、痛みが出る原因、痛みのピーク、痛みを和らげる方法などを、歯科医師の視点からわかりやすくご紹介します。
また、矯正治療をスムーズに進めるための通院の基礎知識や、よくある質問についても解説します。 矯正治療を考えている方はもちろん、すでに治療中の方も、ぜひ参考にしてください。
1. 矯正治療での痛みの本当のところ
2. いつまで痛みは続くの?
3. 知って得する!痛み対策
4. 通院頻度の実際
5. 快適な矯正生活のコツ
6. 要注意!こんな痛みは要相談
◆装着直後・調整後の痛み 痛みが発生しやすい
歯が動き始める時なので、痛みを感じやすいです。なぜかというと歯が動き始める=歯が揺れ始めるからです。
ちなみにマウスピース矯正よりもワイヤー矯正の方が矯正力が強いため、痛みやすいです。
特に装着直後は食いちぎるような動作をすると痛くて食いちぎれないとか、物が噛めないという方が多いです。
それでも翌日からが少し楽になってきて、大体1週間くらいで馴染んでくるというようなイメージです。
マウスピース矯正は矯正力が弱いため、どちらかというと違和感が大きいと思います。
これも1日で大体の人がおさまってくるかと思います。
あとは調整後、あまりに痛みが強い時はマウスピースやワイヤーを調整したり、噛み合わせの当たり具合を少し調整することで痛みを緩和させることができます。
そういった調整が必要かどうかの判断は、歯科医師が口腔内を実際に見て確認し、判断します。
◆装置による痛み これは結構個人差があります。
ワイヤー矯正で多いのがブラケットやワイヤーの端が歯茎や唇、頬などに当たっていたいという事はあります。
そういう時はブラケットを覆うようにワックスをつけたり、シリコンでカバーをすると痛みは収まることが多いと思います。
シリコンに関してが歯科医院でしか取り扱いができない材料ですが、ワイヤーをつけた患者様にはホワイトワックスというものをお渡ししていますので、そちらをつけていただく形になります。
マウスピース矯正では装置による痛みは、歯にフィットするような形にマウスピースがなっていて歯茎にもマウスピースが当たるような事はないため痛みはほぼないかと思います。
ちなみに、歯が動いていて痛いという方は痛み止めを服用していただいても差し支えはありません。
ただ、経験上痛み止めを服用しなければならないほどの痛くなるような事はありませんし、あまりに痛い場合はご連絡いただければ、装置の方に異常がないかチェックして判断させていただきたいと思います。
ワイヤー矯正だと、1日目がピークでその後2-3日目には徐々に慣れてきます。1週間後には馴染んできてほとんど気にならなくなります。
マウスピース矯正は1日ほどあれば馴染んでくる場合がほとんどで、交換したその日がピークで翌日からはほぼ違和感なくつけることができます。
・装置の調整
ワイヤー矯正であればワイヤーの角度やマウスピース矯正ではマウスピースの当たり具合を調整することで痛みを緩和させることができます。
・歯の形、歯の当たり具合の調整
歯の形や当たり具合を調整することで痛みを緩和させることができます。
・痛み止めを飲む
痛み止めを飲むことで痛みを緩和させます。
上記は矯正装置や歯の当たり具合によって痛い時に当てはまる対策ですが、なかには装置の周りがうまく磨けておらず、歯肉炎や歯周炎によって痛むこともあります。
その場合は装置の周りをよく洗浄して必要であればお薬と塗布して炎症を抑えることで痛みが治ります。矯正中の普段のブラッシングはしっかりやるように心がけましょう。
1ヶ月に1回の通院が基本的な通院頻度になります。何かしら事情があって(修学旅行や出張など)次の月に来院できない方は、マウスピース矯正に関しては枚数を多く渡して来院期間を先にすることが可能ですので、ご相談ください。
また、ワイヤーに関しては1ヶ月に1回の調整を行います。
矯正後に関しては歯並びが後戻りしていないかとか、歯や歯茎の状態が大丈夫かなどの確認を含めたメンテナンスになります。
基本的には3ヶ月に1回程度のメンテナンスが望ましいと言われています。
痛い時は無理に我慢せず、まずは歯科医院に相談して診察してもらいましょう。何が原因で痛いのか、すぐに治せるものなのか、調整しないと難しいのか、はたまた歯周炎によって痛いのかによって全く別の対処法になるからです。
そして痛い時は無理に固いものを噛んだり食いちぎるような事はしないようにしましょう。矯正治療中で歯が動いていて一時的に痛みを感じるような状態なので、その状態で無理をして使ってしまうと後々痛みが続いてしまったりする場合がありますので、ご注意ください。
最後に、口腔内の衛生状態を常にキレイにしておくことが大切です。
ワイヤー矯正であれば、普通の歯ブラシに加えワンタフトブラシや歯間ブラシを使用して細かいところまでキレイにしていただいた方が良いです。また、マウスピース矯正でもフロスを使用して細かいところまで丁寧に磨くことで、矯正治療中における虫歯のリスクを激減させることができます。
歯が動く時に歯と歯が噛み合って痛む、というのは珍しくはないことですが、何もしなくても痛い、歯を噛み合わせなくても痛いなど拍動痛といって、心臓があるみたいにバクバク鼓動するような強い痛みが生じた時は神経の症状が出ている可能性がありますので、すぐにかかりつけの歯科医院にご連絡することをお勧めします。
この症状が出た場合には痛み止めも効かないような状態ですので我慢せずにご相談していただければと思います。
矯正治療は歯を動かしていく治療なので、毎日少しずつ噛み合わせが変わります。歯にかかる負担のバランスというのも変わるわけなので、多少の違和感や痛みというのは生じます。基本的には我慢するような痛みなどではないので、「この痛みは我慢すべき?」というようなものはすぐに相談するようにしましょう。
それを乗り越えた先にキレイに並んだ歯並びが待っていますので、一緒に乗り越えていければと思います。