「奥歯は噛んでいるのに前歯が開いてしまう」という開咬(かいこう)は、ただの見た目の問題ではありません。
食べ物をしっかりと噛み切れない、サ行やタ行の発音が漏れる、口が閉じにくいなど、食事・発音・睡眠といった日々の生活の質(QOL)に大きな影響を与える深刻な不正咬合です。
「大人になってからでは治せないのでは?」と不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
ご安心ください。
大人でも開咬は、最新の矯正技術を用いることで十分に、そして効果的に改善することが可能です。
当院では、患者様が抱える「噛めない」「発音しにくい」といった機能的なお悩みから、「人前で思い切り笑えない」という審美的なお悩みまで、一つひとつに寄り添いながら治療を進めてまいります。
開咬を改善することは、見た目を変えるだけでなく、「噛む・話す・笑う」という人間にとって最も基本的な生活機能全体をより快適で豊かなものにするための、人生における重要な一歩なのです。
近年、大人の開咬治療において注目されているのが、インビザライン(マウスピース矯正)です。
開咬の治療では、奥歯を歯ぐき側に沈み込ませる「圧下」という精密な歯の動きが非常に重要になります。
従来のワイヤー矯正と比較しても、インビザラインはマウスピースが歯列全体を覆う構造により、奥歯の圧下や舌の位置、咬合平面(噛み合わせの基準となる平面)のコントロールに優れており、開咬の治療に特に適しているとされています。
| 治療法 | 費用の目安 | 治療期間の目安 |
|---|---|---|
| インビザライン矯正 | 40〜80万円前後 | 軽度:1年〜1年半、重度:2年ほど |
| ワイヤー矯正 | 100万円前後 | 中等度以上:2年〜3年+保定期間 |
| 部分矯正 | 40〜60万円前後 | 軽度の症例に限定 |
| 外科矯正併用 | 自費または保険適用* | 2〜3年+保定期間 |
*顎変形症の診断がある場合に保険適用となります。
開咬といっても、その症状は人それぞれです。
ご自身の開咬タイプを知ることは、適切な治療計画を立てるための重要なステップとなります。
最も一般的なタイプで、前歯の先端同士が接触しない状態です。
機能面への影響: 食べ物を噛み切れない(特に麺類や葉物野菜)、前歯から空気が漏れるため発音(サ行、タ行など)が不明瞭になる、口が閉じにくいため口呼吸になりやすいなどの症状があります。
前歯の開きが大きく、奥歯のごく一部(通常は奥から2本程度)しか噛み合っていない状態です。
健康面への深刻な影響: このタイプでは、噛み合わせの力が奥歯のわずかな部分に過度に集中します。その結果、奥歯の摩耗やひび割れ(破折)のリスクが高まり、また、顎関節(TMJ)や咀嚼筋への負担が非常に大きくなります。
進行すると、慢性的な肩こり、頭痛、顎関節症の発症リスクを高めるなど、全身の不調の原因となることも少なくありません。
顎の骨格そのものの成長バランスの不調和が原因となっているタイプです。
特徴: 上下の顎の骨が垂直方向に長くなっている「ハイアングル型」という骨格の方に多く見られます。骨格的なズレが大きいため、外科的治療を併用する外科矯正を視野に入れる必要があります。
開咬の治療で最も大切なのは、治療後の「後戻り」を防ぐことです。
そのためには、単に歯を動かすだけでなく、開咬を引き起こした根本原因を正確に見極め、改善することが不可欠です。
成人の開咬の主な原因は、幼少期からの生活習慣や長年の癖が関わっています。
最も一般的な原因の一つです。舌を前方に突き出す癖(舌突出癖)や、口で呼吸する習慣は、無意識のうちに1日数千回も持続的に前歯を押し出す力となり、開咬を引き起こし、または悪化させます。
治療への影響: 歯並びを矯正で治しても、この舌癖が改善されない限り、治療後に高い確率で歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り」が発生します。そのため、矯正治療と並行して、舌の正しい位置と動かし方を習得するための舌のトレーニング(MFT:口腔筋機能療法)が必須となります。
長期間にわたる指しゃぶりや、頬杖をつく癖、また食事の際に片側だけで噛む癖、猫背などの悪い姿勢が、顎の成長や歯列に微妙な歪みを生じさせ、開咬の原因となることがあります。
生まれ持った上下の顎の骨の大きさや、成長の方向性の不調和が原因となる場合です。特に「ハイアングル型」と呼ばれる骨格は開咬になりやすく、この場合は矯正治療に加え、外科的なアプローチ(外科矯正)が必要になることがあります。
開咬の治療には、主に以下の3つの方法があります。
それぞれの特徴と、患者様の症状に合わせた適応を詳しくご説明します。
開咬に最も適した治療法の一つとして、当院が推奨しています。
仕組みと利点:
仕組みと利点:
仕組みと利点:
治療期間と費用は、開咬の程度や選択する矯正方法、そして患者様の協力度によって大きく異なります。
| 開咬の程度 | 治療期間の目安(矯正期間) |
|---|---|
| 軽度 | 半年〜1年 |
| 中等度 | 1年〜1年半 |
| 重度(骨格性含む) | 2〜3年 |
上記の矯正期間に加え、治療で整えた歯並びを安定させるための保定期間(通常2年以上)が必ず必要になります。
開咬は特に後戻りのリスクが高いため、この長期的な管理が成功の鍵を握ります。
期間に影響する主な要因:
矯正治療は自由診療となるため高額になりがちですが、当院では安心して治療を受けていただくために、費用についても明確にご説明しています。
矯正治療費は、審美目的ではなく噛み合わせを改善する機能回復を目的とする場合、医療費控除の対象になります。
これにより、確定申告を行うことで所得税の還付を受けることができますので、領収書は大切に保管しておきましょう。
また、当院では、分割払いやデンタルローンなどの支払い方法を用意しております。
患者様の経済状況に応じて、無理のない支払いプランをご提案いたします。
開咬治療を成功に導くには、歯科医師の技術だけでなく、患者様ご自身の治療への前向きな取り組みが非常に重要です。
開咬治療を成功させる最大のカギは、以下の2点に集約されます。
私たちは、治療の進行を一緒に確認し、モチベーションを維持できるようサポートすることで、患者様が前向きに取り組めるよう、“楽しみながら治す矯正”を大切にしています。
開咬治療では、他の矯正治療と比較していくつかの注意点があります。
治療後は、整った歯並びを安定させるリテーナー(保定装置)の使用が必須です。
特に開咬は再発リスクが高いため、当院では治療後も長期的なフォローアップ体制を整え、何年後も快適な噛み合わせを維持できるよう責任をもってサポートいたします。
開咬は、単に「噛めない」「発音がしにくい」といった機能面の問題に留まらず、自信を持って笑えないなど、患者様の心理的な側面や、笑顔の印象にも深く関わってきます。
「大人になってから矯正を始めるのは遅いかな…」「複雑な症例だから治らないのでは…」と思われる必要は一切ありません。インビザライン矯正をはじめとする現代の治療法は、大人の患者様にとって、目立たず、効果的に開咬を改善する最良の選択肢を提供しています。
私たちは、あなたの「噛む・話す・笑う」という生活全体を、より快適で豊かなものにするための専門家であり、長きにわたるパートナーでありたいと願っています。
開咬でお悩みでしたら、まずはお気軽に詳細な検査を受けてください。あなたのための最適な治療計画を、根本原因から一緒に見つけ、未来への一歩を踏み出しましょう。